ALCOHOL DEPENDENCE アルコール依存デイナイトケア

アルコール依存症は、意志の問題ではなく、コントロール障害(飲酒により社会的損失、身体損失があるのにお酒がやめられない状態)があるからこそ「依存症」と診断されます。また、進行性の病であり、治療せず放置しておくといずれは、やがてコントロールを失い社会的に極めて悲惨な結果(失業、離婚、大切な人との断絶など)をもたらす病です。 一方、根気強く治療をすることで回復が出来る病でもあります。アルコール依存症について詳しく見ていきましょう。

01 アルコール依存症とは

誰でもかかる病気

アルコール依存症は、年齢や性別に関わらず誰でもかかりうる病気です。性格的な欠点や人間性の問題ではなく、遺伝的な体質と飲み方によって、誰でもかかる可能性があります。糖尿病が体質と生活習慣によって起こる病気であるのと同じです。

飲酒のコントロールを失う病気

いったん酒に口をつけるととことんまで飲んでしまう。飲むべきではない時にも飲んでしまう。飲酒によって健康も家庭生活も社会生活も損なわれているのに飲むのをやめられない・・・
まさに病気なのです。

進行性の病気

飲み続け、社会的に重大な結果を引き起こすことがあります。1度依存症になったら、放っておいて自然によくなるということはありません。もっと飲み続ければ、病気は更に進行し最後にまっているのは・・・「社会的な死」なのです。しかし、断酒を継続できれば誰にでも回復するチャンスはあり、健康な社会生活に復帰することも可能なのです。

「回復」はあっても「完全治癒」はない

アルコール依存症は、年齢や性別に関わらず誰でもかかりうる病気です。性格的な欠点や人間性の問題ではなく、遺伝的な体質と飲み方によって、誰でもかかる可能性があります。糖尿病が体質と生活習慣によって起こる病気であるのと同じです。

家族の病気

病気になった本人だけでなく、家族もともに病んでしまうのが依存症です。この病気の分かりにくさ、困難さは常に周囲の人を巻き込み、絶えず人間関係を主に進行していくことにあります。つまり当事者に最も身近で心配する存在である家族を巻き込み、共依存関係やイネーブラーを生み出す結果となります。

イネーブラー(enabler)

本人の飲酒に振り回されて世話を焼いたり面倒を見て、結果的には「酒をもっと飲めるようにしている人」をイネーブラーという。つまり本人の飲酒を可能にしている人のことをさす。別の表現としては、「世話焼き」「支え手」「ケアギバー(care/giver)」などがある。

02 治療の三本柱

当院では、アルコール依存症治療の三本柱として、

1:デイナイトケア
2:抗酒剤
3:自助グループ(セルフヘルプグループ)

の三点を重視し、継続的、かつ計画的な治療を行なっています。

治療01

通院(デイナイトケア)

よくいわれる三本柱の1本目は「専門医療機関通院」ですが、当院ではここにデイナイトケアが入ります。入院ではなく、自宅から通うことで、次のステップを目指しやすいように考えています。
それには日中デイナイトケアで過ごすことで「酒から離れた生活」を構築することが第一です。
その上で、デイナイトケアのプログラムを通して、欲求の対処の仕方を様々な形で学びます。教育的・知識なプログラムはもちろん、楽しんで参加するプログラムも含め、回復に必要なものを学ぶためのものです。
また、同じ悩みを抱える方から学ぶこともあります。知識で学ぶ対処法は往々にして上手く実用できません。実際にどうやって止めているのか、集団の中で学ぶことが重要です。

1週間のプログラムの例

 
午前 クッキング ミーティング 常識テスト 自己表現 芸術活動 ミーティング
午後 芸術行動療法 買い物ツアー 芸術行動療法 芸術行動療法 ディスカッション 心理教育
ナイト 断酒会
メッセンジャー
3分間スピーチ チームワーク
トレーニング
ミーティング レクリエーション レクリエーション

※プログラムは治療の段階にあわせて月ごとに変わります。
※デイナイトケアは9:00~19:00までです。昼と夜はお食事を提供しております。

主なプログラム紹介

芸術行動療法

他のフロアと合同で、部活動のような活動を行っています。その時の気分に合わせて多彩なプログラムに参加することが可能です。内部・外部での発表の場も設けており、明確な目標を持って取り組むことが出来ます。
※クリニックによって実施プログラムは異なります

和太鼓
「いろは太鼓」「華音(かおん)」

よさこい
「夢稔(ゆめみのる)」

エイサー
「あしびぃ」

ボクシング

銀太鼓

詳しく見る

 

 

 

 

治療02

抗酒剤

抗酒剤とは服用した後に飲酒すると、すぐ「悪酔い」した時のような状態になる薬です。服用は必須ではありませんが、1日1回家族や関係者の前で服用することで、「今日は1日飲まない」と行動を伴って宣言することに意味があります。
よく聞く話ですが、ご家族がこっそり飲み物などに入れて飲ませるのでは意味がなく、回復すべきお互いの信頼関係を壊す「相手を操作しようとする行為」であり、回復にとって逆効果になります。

シアナミド(水液)

日本では作用がソフトな本剤のほうが広く使われています。効果は約1日です。副作用(湿疹、かゆみ、発熱、頭痛、不眠、嘔吐)は数%です。

ジスルフィラム(粉末)

作用時間が長く、効果は数日です。クリニックでは休みの前の日に、服薬忘れに備えて服用してもらうこともあります。

どうやって使うの?
転ばぬ先の杖

抗酒剤を服用したら、その日はもうお酒を飲むわけにはいきません。うっかり飲んでしまっても、不快な症状のおかげで連続飲酒に至る可能性が少なくなります。また、アルコール依存症の人が病気を理解し、自分の問題を見つめられるようになるまでには時間がかかります。その間、不眠やイライラ、人間関係の苦労、仕事や生活の問題など様々な困難が生じます。そこで抗酒剤を服用しているという自覚が、自分を守る味方になってくれるのです。

断酒の確認作業

抗酒剤の服用は、「今日も1日飲まずに過ごそう」という気持を確認する作業になります。抗酒剤を飲むとき、毎回どんな気持がするか注意してみるといいでしょう。「飲まされている」「飲みたくない」と感じたら、心のどこかに飲みたい気持が隠れているのかもしれません。

信頼関係の入り口

家族や医療スタッフの前で抗酒剤を飲むことは、信頼関係を回復する出発点になります。言葉で「酒をやめる」と何度も繰り返すよりも、抗酒剤を飲むという 目に見える行動 によって、家族は「本当にやめようと思っているのだ」と納得するはずです。

 

もっと知りたいQ&A
薬の副作用が心配です。

副作用の無い薬はどこにもありません。薬効と副作用は表裏一体で副作用よりも薬効の方を優先したい場合に、薬を服用するのです。患者さんが最も気にするのは皮膚の症状ですが、国立久里浜病院で行われた調査によると、抗酒剤を服用している人と、偽薬(蒸留水)を使った人とで皮膚症状の出方による差はありませんでした。湿疹は、断酒による肝機能回復のプロセスでも出ることがあるのです(なお、抗酒剤の服用を納得していない患者さんには副作用が出やすいという報告もあります)。

自分は薬に頼りたくありません。

立派な考えですが断酒は大変な作業です。強烈な飲酒欲求と素手で戦うより、助けてくれるものは何でも利用した方が楽です。かつてアルコールに頼っていたのと比べたら、ずっとずっと前向きではないでしょうか?(抗酒剤は快感を引き起こすものではないので、依存の問題もありません)

家族に監視されているようでイヤです。

家族は困り果てています。飲み続ければ家族は崩壊します。回復には断酒しかないのです。一人では回復できません。家族の協力が必要です。家族を安心させるためにも眼の前で服用することが必要です。

 

アカンプロサートカルシウム(断酒補助剤)※成分名

飲酒に対する欲求を抑える効果があります。前述の薬のように「飲酒したからどうなる」という薬ではありません。抗酒剤と同じく、「飲むだけで治る」薬ではありません。生活を正し、辞める方法を学び、あくまでもその補助として使う形になります。

治療03

自助グループ(セルフヘルプグループ)

自助グループとは医療や行政から離れた、「共通の問題を抱えている人が自主的に集まり、問題を乗り越えるためにある」グループです。アルコール依存症の場合は「AA(Alcoholics Anonymous~匿名のアルコール依存症)」や「断酒会」というものがあります。
デイナイトケアは「中間施設」であるため、デイナイトケアから卒業した後も止め続けるための方策を考える必要があります。そのため、デイナイトケアでも「メッセンジャー」という形で、AAや断酒会の方が話をしに来てくれるプログラムを用意しています。
デイナイトケアで学べるのは「対処法」ですが、自助グループでは依存の根幹の原因を探ります。また、10年20年断酒されている「回復のモデル」が存在し、医療では見出しきれない希望があります。
家族向けの自助グループもあります。ご本人が乗り気ではない場合、先にご家族が参加するのも効果的だといわれています。
集まり(ミーティングや例会と呼びます)に参加してみたい方は、お近くの会場へお問い合わせ下さい。

アルコール依存症関連の自助グループ紹介

AA関東甲信越セントラルオフィス(http://aa-kkse.net/
全日本断酒連盟(断酒会)(https://dansyu-renmei.or.jp/soudan/index.html

03 関係機関の皆様へ

当院の方針は、まずデイナイトケアを中心としたお酒から離れた生活の成立です。そのため「リスク管理」の観点で、サービスの調整や、情報共有や見守りをお願いする場合が御座います。
依存症治療では、方針と情報の共有が、本人の安定の上では重要になります。また、途中でご本人がスリップ(再飲酒)してしまうこともあります。
継続して関係を保ちつづけることがご本人の回復に繋がる最大の要素です。ご本人を中心に、全員で歩調を合わせてお付き合いいただけますと幸甚です。