この国で初めて、罪を犯した障がい者にまつわる問題が脚光を浴びてから、まだ10数年です。書籍や新聞紙面上では時々話題に上がりますが、この問題に対してはまだ認知度が低く、十分な支援体制が整っているとは言えません。
そのため私たちは平成26年10月、この問題に対して日本の医療機関として初めて、支援を行っていこうと立ち上がりました。

以下で私たちの取り組みについて説明致します。

罪を犯した障がい者とは

知的・精神障害があるのに、福祉の支援を受けられず、罪を繰り返す人たちがいます。
毎年、新しく刑務所に入る受刑者の4分の1程度が罪を繰り返す人々だと言われております。私たちリ・ボーンデイナイトケアに通うメンバーさん達の疾患名を具体的に挙げると、知的・精神障害、統合失調症、依存症等で私たちはこのような疾患を持ち、これまで罪を重ねながらも、その中でやっと福祉の支援を受ける事ができるようになった人々を対象として、支援を行っております。

どんな治療を行うか

罪を犯した障がい者の方々に、いったいどんな治療を行っているのでしょうか。
代表的なものを、以下に挙げます。

1. 薬物療法

フロアのメンバーそれぞれが、違った疾患・障害を持っています。毎日の診察の中で、それぞれのメンバーに対して必要と判断された薬剤による治療を行います。

2. ミーティング

精神科で行うミーティングとは、複数の患者様が集まってそれぞれの持っているこころの問題を話し合うとともに、他の患者様の抱える問題点にも耳を傾けて、それに対する自分の感想を話す事を、基本としています。我々はそれに加えて、これまで社会の中で孤立を続けていた方々が、集団の中で話ができて楽しい・心地良いといった感情を味わう体験をして欲しいと考えて、ミーティングを行っております。他に、AA・NA・GA等でも話す機会の少ない、刑務所内での体験を話して共有できる場としても、機能しております。

3. 居場所作り

心理学者のアドラーは、こう言いました。「多くの問題行動の原因は社会の中に居場所がないこと。それを補うために、問題のある行動を引き起こすのだ」「問題を起こす人でも、居場所を持つ事ができれば全ての困難から解き放たれる」と。私たちのフロアが行う支援の最大の特徴として挙げられるのは、まさにこの点です。社会の中でずっと孤立していた方々の居場所になりたい。罪を犯した障がい者の皆さんそれぞれが、「自分の居場所はここだ」と、常に感じて通って貰いたい。そのような環境作りを通して「罪を犯した障がい者の方々を刑務所に帰さない」という大きな目標を達成するため、毎日挑戦を続けています。

関係機関の皆様へ

近年になり、罪を犯した障がい者の問題に対する認知が少しずつ広がってきました。それに伴い一部に対して、福祉の支援が差し伸べていただけるケースが増えたように感じます。
この動きは支援に取り組む私たちにとっても、とても喜ばしい状況です。
まず始めのステップとして、福祉のネットに乗る事が出来た皆様が、次のステップとして適切に社会生活を送るため、我々も必要な力になれればと思っております。
現在私たちリ・ボーンデイナイトケアに通所する方々は、これまで何度も刑務所に服役していた方々です。そのため、治療の流れに乗って集団生活を送る事が、とても困難なケースも数多くありました。そのような中でも、我々は諦めずに支援を続けております。
ただし、我々の力のみでは罪を犯した障がい者方々の地域での生活を、適切に支え続けるのは困難である事も事実です。そのため特にクリニック外での生活について、関係者の皆様と連携が重要になる事を、ご理解いただけると幸いです。
関係者の皆様と協力して、この国の罪を犯した障害者に関する問題を、少しでも小さくしてゆければと考えております。