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MESSAGE

名誉理事長挨拶

現代社会のニーズに
応える必要がある

〜社会が変わり、病気も変わり、医療も変わる〜

医療法人社団 明善会
榎本クリニック名誉理事長 医学博士

榎本 稔

榎本 稔

PROFILE

  • 1935年 東京都荒川区生まれ
  • 1957年 東京大学教養学部理科2類修了
  • 1961年 旧・東京医科歯科大学医学部卒業
    (現・東京科学大学)

成増厚生病院副院長、山梨大学保健管理センター助教授、旧・東京工業大学(新・東京科学大学)健康管理センター教授
などを経て、現職。医学博士(社会精神医学専攻)・東京池袋ロータリークラブ会員

その他歴任 :
拓殖大学客員教授、全日本断酒会連盟顧問、東京都精神障害者家族会連合会相談医、政経同志会幹事 など
立ち上げ学会:
日本大学メンタルヘルス学会、日本学校メンタルヘルス学会、日本精神衛生学会、日本外来精神医療学会、日本「性とこころ」関連問題学会、日本「祈りと救いとこころ」学会 など

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偏見を乗り越えるべく、池袋ど真ん中の公園での第1回運動会

Thema.01

榎本クリニックの使命

第二次世界大戦後、高度経済成長とともに精神科病床数は増え続けた日本に対して、イタリアではフランコ・バザーリアが精神科病院を全廃する革命を起こしました。

日本でも心の病を抱える患者さん達が、地域社会の中で生活ができるようにするにはどうしたらいいか。模索する中で、1992年榎本クリニックを開院しました。未だ閉鎖処遇が中心だった当時、開放型の精神科デイナイトケアを東京・池袋という都心のど真ん中で行う、昔では考えられないことでした。

周囲の反対もありましたが、患者さんが周囲の目を気にせず1日を過ごせるようにビル一棟を、通いやすいように電車が発達してきた駅前に建て、足が痛くて通えない患者さんがいれば送迎を始め、地域の理解を得るためにグラウンドを借りて患者さん達みんなで運動会を開く...。とにかく「入院しなくても通院で治療ができる」というニーズを実現するために、当時の常識に対する挑戦の連続でした。

その中で、イタリアのように一定の人口の中に1つずつ拠点を置く必要があるのではないかと考えるようになりました。そして新大塚、飯田橋、御徒町、大森、小岩、都外に出て神奈川の大船、埼玉の西川口に、地域精神医療を継続的に提供できる場として、デイナイトケアのクリニックを開設してきました。

そして、閉鎖的精神病院の多い東南アジア諸国とも連携すべく、2024年7月にタイ王国の首都バンコクでも、クリニックを立ち上げました。

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1998年 多様化に対応すべく丸々一棟のビルを竣工・移転

Thema.02

社会の変化とともに
専門分化を

統合失調症や双極性障害が中心だった精神疾患も、今や多様になりました。高度経済成長期やバブルの豊かさの裏にあった「ノイローゼ」や「アル中」(アルコール依存症)、バブル崩壊とともに訪れたデプレッション(不景気・うつ)の時代に入り、新型うつ病(非定型うつ病・適応障害)やその影に隠れていた発達障害(自閉スペクトラム症)やⅡ型の双極性障害など、社会変化とともに病気も変化しています。

当院で中心に扱っている依存症も、従来からあったアルコール・薬物・ギャンブルだけではなく、性・万引き・インターネット・ゲームなど、相談内容の多様さは年々増すばかりです。

加速して多様化する社会ですが、人は急速な変化には即応できず、様々な問題となって表れる。その中の一つが、現代病としての精神疾患だと考えています。ですから、社会の変化、病気の変化に合わせ、医療も変化する必要があるのです。

その変化にいち早く対応できるよう、榎本クリニックでは疾患・症状別、目的別、年代別にデイナイトケアを分け、専門分化した治療を心がけてきました。

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Thema.03

アメとムチといきがい
モデル

社会が変わり、価値観が変わり、治療モデルが変わり、しかし人間はそんなに大きく変わってしまったのでしょうか?

私はいつも「アメとムチとモデル」と言っています。

アメというのは優しく保護してあげる、母性原理、地域の中で居場所を作る「居がい」。まずデイナイトケアが安全な場所になるのです。

でも、安全だけでは立ち直れない。やはりムチが必要。父性原理として道を示し、規則正しい生活やトレーニングとしての活動を通して、社会に出ていけるようにする。デイナイトケアはそんな「行きがい」のある場所でありたい。そのために、ボクシングや和太鼓など、他ではやらないようなプログラムも取り入れ、スタッフも日々研鑽をしています。

最後に、社会の変化に自分でも対応できるよう、回復の軸となる「生きがい」というモデルが必要です。自分の生きる目標「生きがい」は、患者さん自身が自分で考えなければいけません。

この原理は、社会がどんなに変わっても、変わらないと思っています。

榎本クリニックのデイナイトケアでは、スタッフと患者さんが一緒になって「生きがい」を模索していけるよう、「医の愛」を届ける場所をこれからも創出していきたいと考えています。

書籍情報

<主要編著書>


  • メンタル医療革命
    ―社会が変わり、病気も変
    わり、病院も変わる

    2018 PHP研究所


  • 榎本稔 著作集Ⅰ
    ―社会・文化精神医学1

    2005 日本評論社


  • 榎本稔 著作集Ⅱ
    ―社会・文化精神医学2

    2005 日本評論社


  • 榎本稔 著作集Ⅲ
    ―アルコール・薬物依存症

    2005 日本評論社


  • 榎本稔 著作集Ⅳ
    ―社会・文化精神医学3

    2012 日本評論社


  • 榎本稔 著作集Ⅴ
    ―社会・文化精神医学4

    2017 日本評論社


  • 榎本稔 著作集Ⅵ
    ―社会・文化精神医学5

    2022 日本評論社


  • 「アルコール依存症―回復
    と社会復帰」(編著)

    1992 至文堂


  • こうして酒を断っている
    ―アルコール依存症からの
    復帰

    1989 太陽出版


  • 医者と患者
    (P.L.エントラルゴ著)

    1983 平凡社

<よくわかるシリーズ>


  • よくわかる依存症
    ―アルコール、薬物、ギャ
    ンブル、ネット、性依存

    2016 主婦の友社


  • よくわかる依存症
    ―ゲーム、ネット、ギャン
    ブル、薬物、アルコール

    2020 主婦の友社


  • 依存症がよくわかる本
    ―家族はどうすればよいか?

    2007 主婦の友社

<性依存症関連>


  • 性依存症の治療
    ―暴走する性・彷徨う愛

    2014 金剛出版


  • 性依存症のリアル

    2015 金剛出版


  • やめられない人々
    ―性依存症者、最後の「駆
    け込み寺」リポート

    2019 現代書林


  • 現代のエスプリ
    「性とこころ―女と男のゆ
    くえ」(編著)

    2000 ぎょうせい

<過去の著作>


  • ヒューマンファーストの
    こころの治療
    ―現代病が増えつづける
    日本の社会

    2017 幻冬舎


  • かくれ躁うつ病が増えている
    ―なかなか治らない心の病気

    2010 法研


  • 現代のエスプリ
    「外来精神医療シリーズⅡ
    ―現代のこころの病」(編著)

    2008 至文堂


  • 現代のエスプリ
    「外来精神医療シリーズⅠ
    ―外来精神医療の現状」(編著)

    2007 至文堂


  • テキストブック
    アルコール依存症

    1996 太陽出版


  • アルコール・薬物依存症者
    に出会ったとき
    ―ともに克服をめざす看護ガイド

    1992 エイド出版


  • にがい宴
    ―女性のアルコール依存症

    1992 太陽出版


  • お父さんお酒やめて
    アルコール依存症克服の軌跡

    1990 太陽出版